『スマート工場アカデミー<25時限目>』(2025.06.01)
- m-koshio
- 2 日前
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梅雨の気配が少しずつ感じられる6月初旬。草木の緑も一層深まり、季節の移ろいを肌で感じる頃となりました。気温や湿度が上がるこの時期は、心と体のバランスを整えることが大切ですね。
技術屋集団コスモマンの一人「たかし」です。
色々な業界団体の会合が開催される時期ですが、多様な分野で技術革新が進み、大変な中にも希望を見出し、着実に前進している姿に力強さを感じます。
今回は前回と関連した「防爆環境への産業用ロボットシステム導入」についてお届けします。
近年、製造現場の自動化・省人化が進む中、産業用ロボットの導入が急速に広がっています。とりわけ、危険を伴う作業をロボットに任せることで作業員の安全を確保し、生産性を向上させる事例が増加しています。そのような中で注目されているのが、防爆環境への産業用ロボットの導入です。
防爆環境とは、可燃性ガスや爆発性粉塵などが存在し、わずかな火花や熱源でも爆発事故につながる危険性のある場所を指します。
こうした環境では、通常の電気機器や機械設備をそのまま導入することはできず、厳格な安全基準を満たした「防爆仕様」の設備が求められます。
防爆環境へのロボット導入の必要性や技術的課題、防爆仕様ロボットの設計ポイント、運用上の留意点、そして今後の展望についてお伝えします。
1. 防爆環境におけるロボット導入の必要性
防爆環境での作業は、多くの場合、人命に関わるリスクが高く、厳しい安全管理の下で行われています。例えば、化学工場や塗装工程、粉体原料を扱う食品・医薬品工場などが該当します。
このような環境では、以下のような課題が存在します。
●作業者の安全確保が困難
●高温や有害ガスによる健康リスク
●設備点検や保守作業の頻度が多い
●人手不足や高齢化の影響
これらを解決する手段として、産業用ロボットの導入が注目されています。ロボットは人間が立ち入る必要のない危険区域での作業を代行できるため、作業者の安全向上と作業効率の両立が可能です。
2. 防爆ロボットに求められる要件
防爆環境で使用される機器には、国際的な安全基準や認証が求められます。日本では、労働安全衛生法に基づく「防爆構造電気機械器具」や、JIS規格、IEC規格(IEC60079シリーズ)などが参照されます。
産業用ロボットを防爆仕様にするためには、以下のような要件を満たす必要があります。
① 防爆構造の採用
前回でも触れましたが、防爆ロボットには主に次の防爆構造が採用されます
・耐圧防爆(Ex d):内部で発生した爆発を筐体で閉じ込める構造
・本質安全(Ex i):回路内の電力やエネルギーを制限して爆発を起こさない構造
・内圧防爆(Ex p):機器内を加圧し、爆発性物質が侵入しないようにする
② 材料と構造の工夫
・摩擦や衝撃による火花を防ぐため、非金属または低火花性の素材を使用
・配線やモータ類はすべて密閉、アースを確実に施す
・可動部分の発熱抑制と監視機構の実装
③ 国際・国内の防爆認証
・ATEX(欧州)、IECEx(国際)、TIIS(日本)などの認証を取得した設計であること
・ゾーン分類に応じた適合機器の使用
3. 実際の導入事例と運用上の工夫
① 導入事例
・化学工場の危険エリアでのバルブ開閉や配管操作
→ 本質安全構造の協働ロボットにより作業員の立ち入りを不要に
・爆発性ガスを伴うタンク内検査
→ 防爆ドローンやアーム付きロボットを使用して遠隔で確認
・粉塵爆発のリスクがある穀物工場での袋詰め作業
→ 耐圧防爆仕様の多関節ロボットによる自動化
② システム構成の工夫
・防爆制御盤をゾーン外に配置し、ロボット本体だけをゾーン内に設置
・空気圧駆動型のアクチュエータを使用して電気火花のリスクを低減
・通信回線は光ファイバを使用し、電磁波や火花の影響を回避
4. 導入時の課題
①コスト面
防爆仕様のロボットは一般のロボットに比べて高価であり、導入初期コストが大きくなります。特に、防爆構造の認証取得には時間と費用がかかるため、ROI(投資対効果)を慎重に見極める必要があります。
②技術面
防爆構造では発熱や火花の制御が必須となるため、従来型の高出力ロボットをそのまま転用することは難しく、独自設計が求められます。
また、防爆環境全体のデジタルツイン化や、ARを用いた保守支援といったスマートファクトリー化も進行しており、ロボットと他システムとの統合運用が今後のカギとなります。
我々コスモ技研が得意な「スマートファクトリー」と「防爆対応システム」を組合せる事でそういった課題の解決が可能になります!
雨に包まれる日が続く6月ですが、自然の恵みを感じながら、心静かに自分と向き合うには良い季節です。季節の変わり目を健やかに乗り越え、晴れやかな夏を迎えられるよう、日々を大切に過ごしていきましょう。
それでは今月もご安全に!

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